こういう婦人に愛された男こそ仕合せであるーー。
新潮社HPより
どんな物語?
倉越夫人はまだ二十八歳でありながら誠に官能の天賦に恵まれていました。
しつけの厳しい家庭に育ち、官能の代わりになるものにほとんど触れてこなかったため、ゆゆくはただ素直に、官能の海に漂うように宿命づけられた、と言ってもよい境遇にありました。
一郎という夫と菊夫という息子が一人いますが、節子は何か今の生活に不十分なものがあります。
時折節子は、結婚前に土屋という同い年の青年とただ一度した接吻を思い出します。
土屋とは結婚後もたびたび偶然に顔を合わせていました。
その時は短くぎこちない会話を交わすだけでしたが、ある日土屋が話があるということで、駅のプラットホームで待っていると告げられます。
それをきっかけに、二人の逢瀬は回数を重ねていくことになります。
感想
まず、題名がきれいです。
美徳はまあ聞きますが、「よろめき」っていう言葉、本来の道筋からずれてしまうような意味合いだととらえますが、なんだかやけに上品に聞こえます。
そして、上流階級の夫人が堕ちる訳でもなく、道を逸れるでもなく、よろめく、というのが何だか深いような気もします。
不倫の間柄とはいえ、こそこそした感じがほとんどないのは、むしろ痛快です。
主人公は節子という女性で、節子の視点で物語は進みます。
不倫の相手は土屋という同い年の青年ですが、こちらの心の中は書かれてませんので、節子と同様に、読者にも分かりません。
そして、都度都度で行われる、主人公の選択については、衝撃を感じます。
文章は読みやすく、明るくはないものの、読後感が悪いということはありませんでした。
作品の発表当時は、大きな話題をよんだ作品だったということで、映画化もされました。
ちなみに映画のポスターの宣伝文句には、
「夜読んでは眠れない‥‥とまで評判される三島文学の映画化!」
という風に書いてあります。
作品は1957年のものなので、なんと約70年前という時代になります。
当時はずいぶん刺激的だったのではないでしょうか。
こんな人におすすめ
不倫とはいえ、どこか優雅な物語に魅かれる人
上流階級の夫人の純粋とも言える、恋愛感情を共感してみたい人
ここまで読んで頂きありがとうございました!
興味を持たれた方は、是非本作を手に取って体験してみて下さい!
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