言われのない差別と偏見の中で丑松が生きた明治。21世紀の世の中は変わりましたか?
新潮社HPより
どんな物語?
被差別部落出身の主人公、瀬川丑松は自分の素性を隠して、教員としての職についています。
丑松は父親の父親による、素性を「隠せ」という戒めを固く守り、それを正しいと信じて、親しい友人にも話していません。
生徒からは慕われ、心を許せる友人もいる丑松でしたが、丑松についての噂はどこからともなく、拡がっていきます。
そして、それに薄々感づいている丑松も、不安と恐怖と隣り合わせの日々を送っています。
しかし、あることをきっかけに、丑松の心に変化が現れ始めます。
感想
生徒からの人望もあり、友人にも恵まれていながらも、自分の素性を隠し続けていく苦悩が、読んでいて心につらく響きます。
秘密を知り、噂を広めようとする人も少なからず存在しますが、そんな丑松の心の中をどのように想像しているのか、とても腹立たしく、悲しい気持ちが浮かびます。
又、この作品は、随所に描かれる風景描写が繊細で、目の前に見事な風景が広がるのを感じることができます。
そしてそれは、丑松の気持ちに合わせて、悲しい場面にも思えたり、未来を照らす風景にも思えたりします。
まだ丑松が自分の素性を理解していない、少年時代のときの風景描写は、とてもきれいに思え、苦悩を抱えた丑松の前に広がる風景は、とてつもなく悲しげです。
時には自分の事を「人のようなもの」とまで、卑下した表現をしてしまうほどにまで、追いつられてしまう、丑松にはとても悲しい気持ちにさせられますし、そんな丑松に何とか道を切り開いてほしいという気持ちもあふれ出てきて、ページをめくる手が止まりません。
こんな人におすすめ
自分の素性を隠し続けている被差別部落出身の青年が、自分の境遇と向き合っていく様子を見守りたい人
美しく、そして目の前に広がるような風景描写を体験したい人
興味を持たれた方は、是非とも本作品を体験してみて下さい!
ここまで、読んで頂き、ありがとうございました!
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