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【神話の果て】読む劇薬! 権力とゲリラ戦の狭間で、人間の存在証明を問う冒険小説

昭和の文学(戦後)

国際的な陰謀が渦巻く南米ペルーの奥地を舞台に、巨大な鉱業会社と先住民ゲリラ組織の戦いに関わる日本人工作員の運命を描く。生と死の境界線で、男が己の信念と破壊衝動を賭ける、極限の冒険小説です。

この作品が生まれた背景

船戸与一氏は、徹底した現地取材に基づくリアリティと、国際的な陰謀や政治的な背景を絡めた骨太な作風で知られる冒険小説の第一人者です。本作が発表された1980年代半ばは、冷戦構造の終焉が近づきつつも、第三世界における資源を巡る大国の思惑や、貧困にあえぐ民衆の蜂起が世界的なテーマとなっていた時代です。

船戸氏は、自身の強い関心があった南米の歴史と社会の矛盾を背景に、物語を構築しました。特に、インカ帝国を滅ぼされ、一方的に植民地支配を受けたペルーの先住民が抱える「やりきれない思い」を、単なるアクションの舞台装置としてではなく、物語の核となる「神話」や「抵抗組織」という形で深く描き込むことで、作品に高い専門性と社会的なメッセージ性を持たせています。これは、単なる娯楽小説を超えた、文学史に残る「冒険小説」の地平を切り開いたと言えるでしょう。

どんな物語?

1985年(昭和60年)の作品

謎多き日系人工作員・志度正平は、アングロアメリカン鉱業(AAM)が発見したペルー奥地の巨大ウラン鉱床を巡る秘密工作に雇われる。彼の任務は、鉱床一帯を支配する先住民のゲリラ組織「カル・リアクタ」の破壊工作であった。しかし、任務開始前に計画は混乱し、志度は敵組織に潜入するため、政治犯として脱獄したヘラルド・ツトム・オオシタという別人になりすますことになる。追跡者、暗殺者、そしてゲリラの指導者たちが入り乱れるペルーの山岳地帯を舞台に、志度は己の破壊衝動と、組織の深層に隠された「神話」の正体へと迫っていくのである。

感想(ネタバレなし)

船戸与一さんの小説は、手に取った瞬間からその世界に引きずり込まれるような吸引力がありますが、この『神話の果て』も例外ではありません。私自身、前に読んだ「山猫の夏」から続く、南米三部作の内の二作目の作品であると知って読み始めました。とは言っても続きではなく、個々で完結している別の物語になっていますので、読む順番は特に気にする必要はありません。

そして、その面白さは期待通りに前作同様であり、期待を裏切らない作品でした。ページをめくる手が止まらない、極限の緊張感が全編にわたって持続します。ただのアクション小説として片づけるにはもったいないほど、描かれるのは、破戒工作員としての息詰まる任務や、遭遇する敵との戦いだけにとどまらず、その背景にあるペルーの歴史や政治の現状の詳細の部分にも及びます。

主人公・志度正平は、生まれ持った破壊への衝動と、冷徹なプロフェッショナリズムを持ち合わせていますが、彼が潜入した先で触れる原住民によって築かれるゲリラ組織の理想と現実、そして彼らの行動原理には、深く考えさせられるものがありました。破戒工作員という主人公の立場と、原住民によって築かれるゲリラ組織。その様々な思いを知り、物語で感じることで共感が深まり、「おもしろかった」という読書体験につながると思います。

一方的に植民地にされてしまった歴史を持つ原住民にとっては、私の想像を遥かに超えた、やりきれない思いが根付いているのかなと思いました。この物語は、単に誰が生き残るかというサバイバルを描いているのではなく、「一体何のための戦いなのか」「真の支配者とは誰なのか」という根源的な問いを、読者である私自身にも突き付けてくるような、非常に重厚な読書体験となりました。この小説は、読む人の胸に熱い何かが残る、まさしく傑作です。

こんな人におすすめ

  • 船戸与一さんの濃厚な冒険小説、特に「南米三部作」を読んでみたい人
  • 国際的な陰謀、スパイ活動、ゲリラ戦といったテーマに心惹かれる人
  • 南米の歴史や、資源を巡る大国間の政治的な対立に興味がある人
  • 単なるアクションではなく、登場人物の強烈な「生き様」や信念の重さを感じたい人
  • 圧倒的な情報量とリアリティに基づく、骨太なフィクションを求めている人

読んで得られる感情イメージ

  • 国際的な陰謀に巻き込まれるような、極限の緊張感と高揚感
  • 善悪では測れない、人間の「業」に対する深い洞察
  • 植民地の歴史や先住民の抵抗に対する、重く、切実な共感

読みどころはココ!登場人物・設定の深掘り

『神話の果て』の読みどころは、主人公・志度正平の対極に立つ、魅力的な敵役たちと、彼らが体現する「神話」の構造にあります。

まず、志度の暗殺を請け負う伝説の破壊工作員、ジョージ・ウェップナーの存在は特筆に値します。彼は志度と互いの実力と才能を認め合う、まるで鏡像のような存在です。彼が「どのみち誰かに殺されるなら自分が」と志度を追う背景には、プロフェッショナルとしての冷徹な美学と、どこか諦念にも似た人生観が見え隠れします。また、暗殺者のジャン・ポール・ギランやポル・ソンファンといった登場人物たちも、それぞれの思惑とプロの技術を駆使し、物語のサスペンスを多重構造にしています。

そして、物語の舞台となる先住民ゲリラ組織「カル・リアクタ」と、その指導者「ラポーラ」の設定が、この作品を単なるアクション小説から昇華させています。この組織の指導者「ラポーラ」の真の姿が明らかになる時、読者は、先住民の長きにわたる抵抗の意志が、一人のカリスマに依存するのではなく、コミュニティの普遍的な信念として受け継がれていることを示唆していることに気づき、大きな衝撃を受けるでしょう。この「個人を超えたシンボルとしての指導者」という設定こそが、この物語の核心をなす「神話」であり、志度が乗り越えなければならない最大の障壁となっています。

国際情勢の裏側を知る! 資源と大国の思惑が絡むリアリティの深さ

この小説は、南米ペルーという舞台を通して、資源(ウラン鉱床)を巡る国際的な企業の陰謀や、それに抵抗するゲリラ組織の活動原理までを詳細に描き出し、読者に国際政治の裏側におけるリアリティを学ぶ情報的な価値を提供してくれます。

読後の余韻をどう楽しむ?

読了後、志度正平が最期に辿り着いた「神話の果て」とは一体何だったのか、深く考えさせられる余韻が残ります。志度が殺戮を通して求めた「存在証明」と、先住民ゲリラが「ラポーラ」という職能を通して築こうとした「解放された世界」の間に、どのような哲学的、構造的な対比があったのかを考察することで、物語の解釈がさらに深まります。

また、船戸与一さんの「南米三部作」である前作『山猫の夏』や次作『伝説なき地』を読み進めることで、それぞれの作品に共通するテーマやキャラクター、そして船戸さんが南米の地に込めたメッセージの一貫性を発見し、壮大な物語世界を堪能できます。特に、志度の持つ「破壊への衝動」と、ラポーラが象徴する「再生の意志」は、人間社会が抱える普遍的な二律背反のテーマとして、読み終わった後も長く胸に響き続けるでしょう。

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