悠々自適な生活を送っていた主人公の代助は、ある女性の世話を焼いているうちに、理想と現実の狭間で苦悩するようになっていく。
どんな物語?
1909年(明治42年)の作品
三十歳になる長井代助は定職には着かず、裕福な実家から援助をしてもらいながら悠々自適な生活を送っている。
父からは「熱誠が足りない男」と評されてしまう代助は、働くことはもちろん、父が持ってくる縁談にもあまり興味を示すこともなく、実家の面々も気をもんでいた。
そんな代助が、久しぶりに再会した中学時代の友人の平岡は、以前勤めていた銀行を辞めていて、生活に困窮していた。
ある時、代助も以前から面識のあった、平岡の妻の三千代から借金を頼まれ、その後も何かと世話をするうちに、代助の三千代への気持が徐々に募っていく。
感想
誰もが認める日本文学の名作と言うことで、「意味分からない」という訳にはいかないという多少のプレッシャーを感じながら読み始めました。
「三四朗」「それから」「門」という夏目漱石の前期三部作ということだけは認識していたのですが、物語としては「三四朗」の続きというわけではなく、だいぶ違った雰囲気になります。
主人公の代助は三十歳ということもあって、ある程度落ち着いた大人ですので、三四朗のような若さゆえの微笑ましさということはありません。
「高等遊民」とも称される、一風変わった代助の大人ゆえの考えや悩み、そして日々接する人たちの境遇などが、代助とのやり取りの中で描かれ、それぞれの考え方や思いが読み手の心に印象深く残ります。
特に代助の自由な愛と、世間一般での常識や果たすべき義務との間で葛藤する姿などは、共感するところも多く、本作の見所を形成していると思います。
物語の展開というよりも、人の考えやふとした感情の動きの描写で、作品の肝を成立させてしまう構成には、人間というものの濃厚な営みを感じさせますし、これが名作たる所以なのではないかと思います。
発表から100年以上たった今でも読み継がれる作品の、決して衰えることのない生命力に満ちた文章を感じる名作であり、今後も読み返したいと思う作品となりました。
こんな人におすすめ
「高等遊民」と称される主人公の生き方に興味がある人。
自由な愛と、世間一般の常識と義務の狭間で葛藤する苦悩に関心を持った人。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
興味を持たれた方は、是非とも本作品を体験してみて下さい!





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