劇的かつ稀有なる物語。三島文学、究極の到達点。
新潮社HPより
どんな物語?
1971年(昭和46年)の作品
本多が旅行先で出会った、安永透という少年には三つの黒子がありました。
本多は、清顕から続く転生を感じ、貧しい境遇の透を養子に迎え、教育を施していきます。
感想
三島由紀夫最後の大作もいよいよ大詰めです。
タイトルはなんだか字面はきれいですが、意味としては
天人五衰(てんにんのごすい)とは、仏教用語の一つで、六道最高位の天界にいる天人が長寿の末に迎える死の直前に現れる5つの兆しのこと。 Wikipediaより
とのことで、何だか終焉を感じさせる雰囲気がただよっています。
まずは、冒頭に登場する安永透の、「港に入ってくる船が桟橋につける順番を公平に決める」という仕事に興味をそそられながら、読み始めました。
おそらく「景色良くて気持ちいい!」って言えるような場所にある仕事場が想像できて、物語の入りとしては、とても良い感じです。
一巻から続く転生の物語ですが、それを引き継ぐと思われる少年に、七十六歳になっている本多は出会います。
それまで、仕事仲間の信頼もあり、知り合いの精神病の女性にも優しく接していた青年が、
境遇の大きな変化の影響を受けてか、心にも変化が現れていくのが、印象深いです。
そして、もはや老齢になった本多も、まだまだ波乱の人生を送っています。
この物語の結末に向かい、本多に何が起こり、どのような思いを抱えていくのか必見です。
尚、この作品の入稿日当日に三島は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺しました。
その当時の心境や思想も、おそらくこの作品には影響を与えていると思います。
そんなことを想像しながら読み進めるのも、ひとつの読み方かもしれません。
こんな人におすすめ
貧しい境遇から一変して、裕福な家庭で教育を施されていく心境を感じ取りたい人
三島由紀夫の最後の大作を、三島の心境や思想と重ね合わせながら、作品に向かいたい
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
興味を持たれた方は、是非とも本作品を体験してみて下さい!

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