まだ天体の動きが完全に分からなかった時代、暦には寿命が存在した。そんな時、改暦という大事業に立ち向かった男がいた。天を相手の大勝負が始まる!
どんな物語?
2009年(平成21年)の作品
舞台は徳川四代将軍、家綱の時代。
御城の碁打ち衆という職をもちながら、算術の楽しさで頭がいっぱいの渋川春海は天文学にも通じる多才な青年である。
そんな春海が関わることになった「改暦」という大事業。
出会い、別れ、挫折、様々な思いを抱えながら、天を相手の大勝負に立ち向かう。
魅力あふれる若者の成長と、「暦」というものの重みが感じられる大作。
感想
囲碁の実力者でありながらも、好きな算術に没頭してしまう若者に、とてつもない好感を持つことがとても心地よいです。
算術の問題を解くのが楽しくてしょうがない春海の様子は、こちらまで「問題を解くのって楽しいのかな?」という思いが浮かんできそうです。
多才でありながらも、まだ若く、人間的には臆病な所もあったりと、まだまだ立派な大人になりきっていない様子や、周りの人達との温かみのあるやり取りは、とても微笑ましく感じられ、物語を通しての大きな魅力となっています。
そして、そんな人間味があふれる春海が立ち向かう、「改暦」という大事業。
そこには朝廷公認の「宣明暦」が抱える誤差の問題、それを改めることの困難さ、そして何よりも保守的な勢力や既得権益との対立が詳細に描かれています。
単に計算が合えば良いという話ではなく、政治、文化、人々の生活に深く根差した「暦」というものの重みが伝わってきます。
『天地明察』は、単なる歴史物や伝記ではなく、「信念をもって真理を探求する人間の美しさ」を描いた作品です。
天を仰ぎ、星々の運行を読み解こうとした一人の男の生涯は、現代を生きる私たちにも、自分の信じる道を貫くことの大切さ、そしてその困難さを教えてくれます。
読後には、夜空を見上げ、その遥かなる宇宙の運行に思いを馳せたくなる、感動的な一冊ですし、物語の題名である「天地明察」という言葉が、とても爽快でカッコよく聞こえるという感覚も味わうことができると思います。
こんな人におすすめ
困難だらけの大事業に立ち向かう主人公の様子を共に味わいたい人
「暦」というものの存在を、当時の歴史背景を踏まえて感じてみたい人
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
興味を持たれた方は、是非とも本作品を体験してみて下さい!





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