「金俊平」この強烈な個性に圧倒されて、あなたはきっと、この名前を忘れられなくなる。
どんな物語?
1998年(平成10年)の作品
在日朝鮮人の金俊平は、巨漢で凶暴、自己中心的で誰もが恐れる存在であった。
決して人を信用せず、ただ信じるのは自分自身のみ。
他人に迷惑をかけながらも、そんな感情は一切なし。
その壮絶な生き様の行きつく果ては?
感想
この物語を支配しているのは、強烈な個性です。
まず、この個性に共感することはありません。読んでいて感じる共感の大部分は金俊平と対峙した人間に対してです。
誰もを圧倒してしまう暴力と、自己中心的な行動により、自分の生き方を貫いていく様子は、もう唖然としてしまうほかはありません。
家族にとっては、金俊平という存在は脅威でしかなく、この人物に関わりながらも必死に生活をしていく様子は、苦難の連続になっていきます。
様々な人たちが、その時々の場面で金俊平とどのように関わっていくのかというのが、一つの見所だと思います。
小説の舞台となっているは1930年代となっており、在日朝鮮人に対する悲しい差別を受ける様子や、それに立ち向かう在日朝鮮人たちの活動など、当時の時代風景を感じられる様子も描かれていて、興味深く読みました。
不思議と読後感はあまり悪いものではありません。
恐怖・憎しみ・悲しみという感情になることが多くありますが、ただ「嫌な奴だな」というだけでは終わらない、登場人物たちの負の熱量が心にぶつかってくるような気持ちにさせられる作品です。
こんな人におすすめ
凶悪で自己中心的な、金俊平という人物に興味を持った人
日本に渡ってきた朝鮮人達の苦労、金俊平の存在に悩まされる人々の苦労を、物語を通して感じ取りたい人
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
興味を持たれた方は、是非とも本作品を体験してみて下さい!

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