" /> 【血と骨】読む劇薬! 圧倒的な「父」の存在を通して、人間と差別、家族のあり方を問う | 本読み広場

【血と骨】読む劇薬! 圧倒的な「父」の存在を通して、人間と差別、家族のあり方を問う

現代文学(平成・令和)

戦前の大阪に渡り、破天荒な暴力と自己中心的な生き方を貫いた一人の男、金俊平。その血を分けた息子(著者)が、憎悪と愛情を込めて、時代と差別に翻弄された在日朝鮮人一家の凄絶な運命と、父の強烈な「生」のエネルギーを描き切った自伝的大作である。

著者・作品の創作の原点

梁石日(ヤン・ソギル)氏は、大阪生まれの在日朝鮮人二世として、日本の戦後社会の底辺から、差別や貧困、暴力といった厳しい現実を見つめてきた作家です。本作は、彼の原点であり、自身の破天荒で強烈な父をモデルに描かれた自伝的小説です。

作品の背景には、1930年代以降の戦前・戦後の日本における在日朝鮮人というマイノリティの置かれた過酷な社会情勢があります。日本の植民地支配から解放後の混乱、そして戦後の貧困と差別の中で、父・金俊平は社会の規範や常識を無視し、己の「血と骨」で決めた生き方を貫きました。梁石日氏は、この父の「生き方」を、憎しみながらも生命力として捉え、自らの文学の核としました。この作品は、個人の壮絶な人生と、歴史的・社会的な背景を重ね合わせることで、日本文学に「在日」というテーマのリアリティと深遠さを確立させた、著者の魂の原点と言えるでしょう。

どんな物語?

1998年(平成10年)の作品

物語の舞台は、戦後から高度経済成長期にかけての日本。主人公は、作者自身の父親をモデルにした金俊平という名の在日コリアン男性である。彼は、強烈な生命力、暴力的な気質、そして女と金への尽きない欲望を持つ、まさに「怪物」のような存在として描かれる。俊平は、家族に対して愛情を示す一方で、理不尽な暴力と支配を振りかざし、一家を貧困と苦難の渦に巻き込んでいく。

金俊平は、時代の波に飲まれながらも、裏社会で独自の生き方を貫き、常に周囲を圧倒する存在である。家族は、この圧倒的な父の存在に怯え、憎みながらも、生きていくために父に関わり、その血と骨の呪縛から逃れようと必死にもがく姿が描かれている。

感想(ネタバレなし)

この『血と骨』を読んでまず心に刻まれるのは、父である金俊平の強烈な個性がこの物語を支配しているという事実です。彼は、一般的な道徳や常識、家族の情愛といったものを完全に超越した存在として描かれており、読んでいる間中、その強烈な熱量に圧倒され続けました。

正直に言って、この個性に共感することはありません。読んでいて感じる共感の大部分は、金俊平と対峙した人間に対してです。誰もを圧倒してしまう暴力と、自己中心的な行動により、自分の生き方を貫いていく様子は、もう唖然としてしまうほかはありません。その凄まじい「生」のエネルギーは、善悪の判断を超えて、読者の心に強烈なインパクトを残します。

家族にとっては、金俊平という存在は脅威でしかなく、この人物に関わりながらも必死に生活をしていく様子は、苦難の連続になっていきます。特に母や姉弟が、この暴君とも言える父からどうにかして生活を守ろうとする姿は、読んでいて非常に悲しく、胸が締め付けられました。

また、小説の舞台となっているは1930年代となっており、在日朝鮮人に対する悲しい差別を受ける様子や、それに立ち向かう在日朝鮮人たちの活動など、当時の時代風景を感じられる様子も描かれていて、興味深く読みました。この時代背景と、金俊平の破天荒な生き方が絡み合うことで、単なる家族の物語ではない、社会的な重みが加わっています。

この作品を読んでいると、恐怖・憎しみ・悲しみという感情になることが多くありますが、ただ「嫌な奴だな」というだけでは終わらない、登場人物たちの負の熱量が心にぶつかってくるような気持ちにさせられる作品です。この物語は、血縁という避けられない宿命と、個人の根源的な生命力を、容赦なく、そして文学的に描き出した、まさに圧巻の一冊でした。

こんな人におすすめ

  • 梁石日氏の実録小説、あるいは自伝的要素の強い骨太な作品を読みたい人
  • 戦前・戦後の日本社会における在日朝鮮人の歴史や生活に興味がある人
  • 圧倒的な暴力性や生命力を持つ「父」というテーマの小説を求めている人
  • 家族の絆や愛情といった美化されたテーマではなく、生々しい人間の「業」を描いた作品を読みたい人
  • 社会的な差別や困難に抗う人間の強靭な精神力を感じたい人

読んで得られる感情イメージ

  • 圧倒的な暴力とエネルギーに触れる、強烈な緊張感と衝撃
  • 時代と差別に翻弄される人々への、深い悲哀と共感
  • 善悪の境界を超えた「生」の根源的な力に対する、畏怖の念

読みどころはココ!登場人物・設定の深掘り

『血と骨』の圧倒的な読みどころは、著者の父をモデルにした、金俊平の徹底的な描き方と、彼を取り巻く女性たちの強靭な「生」の姿にあります。

金俊平は、常軌を逸した暴力と自己中心的な欲望の権化として描かれますが、その生き方は、当時の在日朝鮮人という境遇に対する、ある種の極端な抵抗の形とも解釈できます。彼は社会のレールや常識から外れることで、差別や抑圧から自由であろうとした、時代が生み出した異形のヒーローとも言える存在です。彼の行動は規範の外にありますが、その生命力は読む者に強烈な印象を与えます。

また、金俊平に振り回され、苦難を強いられる母や、その他の女性たちの存在も、この物語の深みを増しています。彼女たちは、父の暴力や不在、貧困という過酷な現実の中で、ただ従順に耐えるだけでなく、時に反発し、しぶとく家族を守り、自らの「生」を確立しようとします。金俊平の強烈な「血」に対し、彼女たちは静かで強靭な「骨」のような精神力と生活力を象徴していると言えるでしょう。彼女たちの葛藤と生き様は、父の暴力的なエネルギーと対比され、物語に多層的な視点を与えています。

歴史の影に生きた人々の「生」の重みを体感する

この小説は、戦前・戦後の日本において、公には語られにくい在日朝鮮人というマイノリティの過酷な生活や差別の現実を、一家族の凄絶な物語を通して描き出しています。読者は、歴史の裏側で生きた人々の「生」の重みを深く体感できます。

読後の余韻をどう楽しむ?

読了後、金俊平という父の圧倒的な存在が、息子(著者)の文学という「行為」にどのように昇華されたのかを考えることで、物語の構造的なテーマを楽しむことができます。憎しみと愛着、そして血縁という逃れられない宿命が、「暴力」と「表現」という二つの力としてどのように作用し合ったのか、その哲学的対立を考察することが、この作品の大きな読後の余韻となるでしょう。

また、梁石日氏が自身の作品で繰り返し描く「家族のあり方」「在日というアイデンティティ」といったテーマと、この『血と骨』における「父」の定義を比較することで、彼の文学全体への理解が深まります。金俊平が描かれた「血と骨」が、日本の戦後文学に残した影響について、他の作品との関連性を探ることもおすすめです。

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