" /> 潮騒 三島由紀夫 感想 | 本読み広場

【潮騒】純粋な愛と肉体の輝き。三島由紀夫が描く、美しき青春の神話

昭和の文学(戦後)

海と太陽の下、素朴で健康的な青年と娘が、島の試練を乗り越え、清らかな愛を成就させる物語。

著者・潮騒の創作の原点

三島由紀夫は、戦後日本の退廃的な状況観念的なテーマを追求する一方で、「健康な肉体」と「日本の古典的な道徳」の美しさを理想としていました。この『潮騒』は、ギリシャ悲劇『ダフニスとクロエ』に着想を得て、人工的な美を排除し、自然の生命力の中で育まれる純粋な若者の愛を描くことを目指して執筆されました。

発表当時、日本の社会が急速な近代化西洋化に進む中で、この作品は失われつつある日本の素朴で健康的な倫理観を提示し、読者に健全な美の理想を再認識させました。その簡潔で力強い筆致は、三島文学の多様性を象徴する作品として高く評価されています。

どんな物語?

1954年(昭和29年)の作品

伊勢湾の歌島で暮らす18歳の漁師、久保新治は、村の有力者の娘として島に戻ってきた海女の宮田初江に心惹かれる。恋愛を知らない新治と、無口で清らかな初江は、島の監的哨跡などで偶然出会い、やがて愛を確かめ合うようになる。裸の肉体の美しさを前にしても、二人は道徳に対する敬虔さから純粋さを保つ。しかし、灯台長の娘・千代子の嫉妬や、裕福な青年・川本安夫の邪推から、二人の間に悪い噂が立ち、初江の父・照吉によって会うことを禁じられてしまう。

感想(ネタバレなし)

『潮騒』を読み始めたとき、その文章の簡潔さと、海と太陽の光に満ちた描写に、心を洗われるような爽快感を覚えました。三島由紀夫の他の作品にしばしば見られる、耽美的な観念内省的な苦悩とは一線を画す、素朴で健康的な美しさが、この物語全体を包み込んでいます。

主人公の新治は、貧しい漁師でありながら、力強い肉体と、純粋で道徳的な精神を持っています。彼が、初江という清らかな美しさを持つ娘と出会い、恋愛感情に戸惑いながらも、海という大自然の中で徐々に愛を育んでいく過程は、まるで古の神話を見ているかのようでした。二人が監的哨跡という人工的な廃墟の中で、火を飛び越えて互いの裸を見つめ合うシーンは、人間の肉体が持つ原始的な美しさと、純粋な道徳心がせめぎ合う、非常に象徴的な場面だと感じました。

この小説の魅力は、島民たちの生活や、海女たちの情誼(じょうぎ)など、島の共同体が持つ温かさにもあります。二人の若者の愛は、千代子の嫉妬や安夫の邪な行動によって試されますが、周囲の大人たち(親方や海女たち)が、彼らの純粋さを見抜き、温かく見守る姿は、読者に深い感動と安心感を与えてくれます。これは、自然の中で健全に育まれた肉体と精神が、現代社会の醜い側面に打ち勝っていく、三島由紀夫が理想とした「日本の美」が結実した物語だと感じました。

こんな人におすすめ

  1. 純粋で健全なラブストーリーを読みたい人
  2. 海や自然を舞台にした、詩的で美しい描写が好きな人
  3. 三島由紀夫の作品の中でも、比較的に明るく読みやすい作品から入ってみたい人
  4. 素朴な共同体の温かさや、日本的な倫理観を感じられる物語を求める人
  5. 青春期の肉体と精神の輝きが、美しく描かれた文学作品に触れたい人

読んで得られる感情イメージ

  • 海と太陽の光に満ちた、健康的で爽やかな解放感
  • 若者たちの清らかな愛と、島の共同体の温かさに対する深い感動
  • 自然の描写と簡潔な文体からくる、清澄で研ぎ澄まされた美意識

読みどころはココ!登場人物・設定の深掘り

『潮騒』の読みどころは、主人公の新治と初江の「純粋な愛」を際立たせる、島の特殊な世界観と、対照的な脇役たちです。

新治の親方である大山十吉や、初江の父宮田照吉、そして島の年配の海女たちは、厳しくも温かい島の共同体を象徴しています。彼らは、新治と初江の間に悪い噂が立った際、都会的な邪推をする安夫とは異なり、初江の肌を見て処女性を直感するなど、自然と労働の中で培われた本能的な知恵と倫理によって、二人の真の純粋さを見抜きます。

また、千代子川本安夫という二人の存在は、新治と初江の「自然な美」に対する、「近代的な醜さ」あるいは「都会的な邪推」を対比させる役割を果たしています。安夫は、夜光腕時計や都会の雑誌に影響を受け、性的な欲求を邪な行為で満たそうとしますが、自然の力(蜂)によって懲らしめられます。この対比は、三島由紀夫が理想とした「健全な倫理」と、彼が批判した「戦後の退廃」を象徴的に示しており、物語に深みを与えています。

三島由紀夫が理想とした「肉体と道徳の統一」という普遍的な美の形

この作品は、三島由紀夫が追求した「健全な肉体美」と「清らかな精神性」の統一が、人工的な観念を離れ、自然の中で実現した理想的な形を示しており、三島文学における「美の理想」の根源を知るための情報的な価値を持っています。

読後の余韻をどう楽しむ?

読了後、新治が台風の荒海の中で命綱を結びに行く場面が、単なる勇気ある行動であったのか、それとも初江への愛を証明するための「儀式」であったのか、という点について考察してみてください。また、物語の舞台となった歌島(神島)を訪れるなど、自然の生命力に触れることで、新治と初江の愛がいかに自然と一体化していたかという、構造的な考察のヒントが生まれるでしょう。

この作品は、ギリシャの古典小説『ダフニスとクロエ』に着想を得ています。このギリシャの物語を読んで比較することで、三島由紀夫が、古代の牧歌的な愛の物語を、いかに戦後日本の孤島の風景と倫理に置き換え、現代の神話として再創造したのかという、文学的な創作の構造をより深く楽しむことができます。

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