" /> OUT 桐野夏生 感想 | 本読み広場

OUT/桐野夏生 感想(ネタバレなし)

日本の小説

必死に生きている女性たちが抱える不満、絶望、そして狂気

どんな物語?

1997年(平成9年)の作品

夜間の弁当工場で働く女性たち。彼女たちは借金、夫婦の不和、終わりのない介護と様々な苦労を抱えながら、必死に日々の生活を送っている。

そんなある日、いつも一緒にいる4人の仕事仲間の一人が、重大な事件を起こしてしまう。

仲間の中でも周りに一目置かれている雅子は、その後処理に手を貸すが、思わぬ誤算が思わぬ人を巻き込み、雅子にもコントロールができない状況に追い込まれていく。

感想

職場の仲間が起こしてしまった重大事件。

それによって、ごく普通の女性たちが、追い詰められ、常軌を逸した行動を取る様子は、大きな衝撃として迫ってきます。

普通に暮らす人々が決して足を踏み入れることのない、「OUT」な状況に踏み込んでしまった女性たちの不安や悲しみ、時折見せるささやかな希望が丁寧に描かれている様子が心をとらえて離しません。

印象深かったのは、女性たちの間に生まれる奇妙な連帯感です。事件に関わっていく精神的な極限状況において、彼女たちは互いに支え合い、様々な思惑を持ちながらも、共犯者としての絆を深めていきます。

特にその中でも、主人公が事件の処理に足を踏み込んでいく精神力は、一般常識では有り得ないものであり、常人には決してまねのできない強さに目をみはるばかりです

またその強さゆえに、異常な方向性に突き進んでしまって行く展開が感情をひきつけ、そして一種の悲しみを誘います。

女性たちの関係性は、時に危ういながらも、確かな連帯として描かれており、読者に深い問いを投げかけてきます。

社会から見放され、孤立した存在として描かれている彼女たちが、互いを唯一のよりどころとする姿は、悲しみと同時に強い生命力を感じさせました。

こんな人におすすめ

事件に関わる、様々な人たちの感情の動きを感じてみたい人

普通の人が踏み入れることのない「OUT」な日常に突き進む状況に興味を持った人

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

興味を持たれた方は、是非とも本作品を体験してみて下さい!

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