長編小説

『豊饒の海』四部作の最終巻。老いた本多繁邦は、最後の転生体として見出した薄幸の少年・安永透を養子に迎えるが、やがてその転生にも疑念を抱き始める。美と実在の儚さ、そして「空（くう）」という究極のテーマに到達する三島文学の金字塔。すべてが終わり、無に帰す衝撃の結末。

老境に入った本多繁邦は、転生を信じ、タイのバンコクで出会った美しいインドの王女に、かつての友・清顕の魂の再来を見る。輪廻転生というテーマが深化し、東洋と西洋の哲学が交錯する中、生と死、愛と老いを考察する。三島由紀夫のライフワーク『豊饒の海』の核心に迫る第三部。

春の雪』で悲劇的な死を遂げた清顕の魂は、右翼的な思想に傾倒する若き剣道家・飯沼勲へと転生した。昭和初期、清純な行動主義と天皇への絶対的な忠誠を胸に、国家転覆を企てる青年の、純粋で破滅的な生き方を描く。『豊饒の海』四部作において、「行動」と「思想」の美を問う緊迫の第二部。

大正時代、華族階級に生まれた美貌の青年・松枝清顕と、幼馴染である伯爵令嬢・綾倉聡子の悲恋を描く。輪廻転生をテーマとする『豊饒の海』四部作の幕開けとして、美、恋、そして破滅を、絢爛たる王朝絵巻のような文体で綴る。三島由紀夫が描く、究極のロマンティックな悲劇。

前作『氷点』で生じた家族の愛憎と罪の連鎖から、真の愛と許しを求めて葛藤する辻口家の人々を描く続編。「赦し」という究極のテーマに、より深く、そして希望をもって迫る。人間の再生と救済を描き切った感動の完結編。

北海道の旭川を舞台に、夫・啓造の「復讐心」から養女として迎えられた陽子と、彼女を取り巻く家族の愛憎を描く。人間の原罪、愛と憎しみ、許しといった普遍的なテーマを深く問い、社会現象を巻き起こした三浦綾子のデビュー作であり、日本の純文学におけるヒューマンドラマの金字塔。

新設大学でテニス部を設立した若者たち。熱狂的な青春の日々を送るが、初恋と友情、そして予期せぬ喪失と試練が彼らを襲う。宮本輝が描く、青春の輝きと、静かで切ない物語。

昭和初期、美しい島の分教場に赴任した若き「おなご先生」と、12人の純粋な瞳を持つ子供たち。激動の時代と戦争の波が、師弟の絆とそれぞれの人生に悲劇の影を落とす。壺井栄の不朽の感動作。

明治の北海道、鉄道職員として働く誠実な青年、永野信夫。キリスト教の信仰と静かな愛を貫いた彼の人生は、塩狩峠での鉄道事故を前に究極の試練を迎える。感動の実話を基にした、魂の献身の物語。

彼女に踏みにじられたい、そんな欲望が君の心の奥底にもひそんでいるはずだ！新潮社HPより

砂丘の底の穴に囚われた男と女。脱出不可能な極限状況の中で、男は不条理な監禁生活を強いられる。安部公房が問う、現代人の自由と実存、そして不条理な日常のメタファーを描いた世界的な傑作

己の出生の秘密と妻の裏切りという重い宿命を背負い、孤独な旅を続ける作家・時任謙作。自己の闇と格闘しながら、真の安らぎを求めて生の深奥へと進む魂の遍歴。純粋な心が辿り着く「愛」と「救済」の最終地点を描く、志賀直哉唯一の長編小説。

平凡な妻が、日常の退屈から逃れるように踏み出した不倫の「よろめき」。主婦・倉越桂子が体験する、理性と欲望の危険な綱渡りを、三島由紀夫が徹底した心理描写で描き切る。美徳とは、愛とは、そして真の堕落とは何か？ 戦後日本の道徳とエロスを問う、鋭利な問題作。